ナガハシスミレ

ナガハシスミレ(スミレ科)[長嘴菫]

細長く斜上する距の形からこの名があり、天狗の鼻にも似ているということで、別名テングスミレという。

主に日本海側の低山の木陰に群落をつくる無毛の多年草。青森県では太平洋側でもよく見る。
花がないときは、タチツボスミレと判別が難しいが、花時であれば一目瞭然、花自体は小さいがこれほど立派な距をもったスミレはほかになく、長さ2-3cmもある。距の中には蜜がたまっていて、当然昆虫がやってくる。しかし、この長い距の先に届く口吻をもつ昆虫はざらにはおらず、ポリネーター(送粉者)はビロウドツリアブだといわれている。口吻の短いハチの中には横から穴を開けて直接蜜を吸う(盗蜜という)ずるい奴がいるようで、容易に盗蜜させないようにするため、距を長くして蜜のありかを分かりにくくしているのだといわれている。

根茎は肥厚し木質化して硬く、分枝して横たわる。地上茎のあるスミレで茎は高さ5-15cm。
葉は互生し、根生葉は越冬して翌年の花時に残る(上の画像)。根生葉は長さ2-4cmの円心形で鋸歯は低く、先は急にとがり基部は深い心形、やや厚く光沢がある。葉柄は長さ2-5cm、基部に長さ1cmの狭卵状長楕円形の托葉があり、櫛の歯状に切れ込み、乾くと赤褐色になる。茎葉は卵心形でやや厚く、光沢がある。
花柄は根生または地上茎の葉腋につき、上部に小苞がある。花は淡紫色~淡紅色で直径約1.5cm、花弁は重なり上弁は後方に反り返り、斜め前方から押し潰されたような形になる。花の中心部は各弁にまたがって白色となり、唇弁と側弁に紫色の模様が入る。花の色は変化が多い。5個の花弁は長さ1.2-1.4cm、側弁基部は無毛、距は著しく長くて細く、斜上して長さ2-3cm。萼片は広披針形。
果実は楕円形で無毛の蒴果で果柄は直立する。3片に裂開して種子を飛ばす。

花が純白のものをシラユキナガハシスミレという。北アルプス北部の蛇紋岩地帯に生えるミヤマナガハシスミレは小型で葉は濃緑色、花の色は濃紅紫色。
平成9年(1997年)に新種発表されたアワガタケスミレは、日当たりのよい岩場などに生え、葉は厚く光沢があり、基部は切形。新潟・山形・福島県に希少分布する(環境省レッドリスト準絶滅危惧(NT))。
花期:4-5月
分布:北(南西部)・本(鳥取県以北の主に日本海側)・四
撮影:1997.5.10 青森県東通村
ナガハシスミレ-2
2010.5.8 青森県六ヶ所村

ナガハシスミレ-3
2010.5.8 青森県六ヶ所村


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