ムシトリスミレ

ムシトリスミレ(タヌキモ科)[虫取菫]

花や姿がスミレを思わせ、葉の表面の粘液で虫を捕らえるのでこの名がある。

山地帯~高山帯の湿った岩上や草地に生える多年草。肉質の葉の表面は粘液でべたべたしており、ここに止まって動けなくなった虫を消化吸収して養分としている食虫植物。このような食虫植物は日本には20種類以上ある。
葉は全て根生し、淡緑色、肉質で動物の舌のような葉をロゼット状に3-5個広げる。長さ3-5cm、幅1-2cmの長楕円形で先は鈍頭。縁は全縁で内側にややまくれ上がり、表面に密生している腺毛から粘液を分泌する。
株の中心から5-15cmの花茎を直立する。花茎は分枝せず、まばらな腺毛がある。上部にスミレに似た感じの花を横向きに1個だけつける。花は青紫色で長さ1.5-2.5cmの筒状の唇形花。上唇は短くて先は2裂し、下唇は上唇の2倍長で3裂し、内側に長い腺毛が生え、基部に細長くまっすぐな距がある。距の先は鈍頭。萼は5深裂し長さ2-4mmの唇形で、上唇は3深裂し、下唇は2深裂する。裂片は長楕円形。雄しべは2個で花冠筒部の基部の下唇側につく。子房は球形で花柱は短く柱頭は2つに分かれる。
果実は長さ6mmほどの卵球形の蒴果で、花後に上を向いて熟すと2裂し、細かい種子を散らす。

栃木県の庚申山に希産するコウシンソウは、ムシトリスミレに似ているが全体に小さく、明らかな葉柄があり、しばしば花茎が2分岐する。
花期:6-8月
分布:北・本(中部地方以北)・四(石立山)
撮影:2004.6.27 秋田県田沢湖町
ムシトリスミレ-2
湿った岩上や草地に生える。 2015.7.5 岩手県八幡平市

ムシトリスミレ-3
葉の縁は内側にまくれ上がり、表面の粘液で虫を捕らえる。 2015.7.5 岩手県八幡平市


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